テニスエルボー
(09/02/2000更新)
カナダのバンクーバーに住んでいた時、テニスエルボーで約2年テニスができない苦しい時期を経験しました。テニスが
何よりも好きという方にとっては、「とにかくまずテニスを当分やめましょう!」という医者の言葉ほど、受け入れがたい
ものはないでしょう。でも、これは、絶対にして、最高の治療法です。
医者から言われたことと自分の経験をまとめてみました。今、テニスエルボーに悩みながらも、何とか肘と自分自身を
騙し騙し、日々テニスに励んでいる方の参考にしていただければ幸いです。
まず、テニスエルボーに関してですが、痛みのある部位によって正確には3種類 あるんだそうです。
手のひらを上に向けた状態で親指側の肘が痛いのがバックハンド肘と言いバックボレーやバックストロークに問題が
あって起るテニスエスボーです。通常テニスエルボーと言われているのは、この症状が一番多く、私の場合もこれでした。
次に小指側が痛いのがフォアハンド肘です。打点が遅れた状態で無理にトップスピンをかけたり、単純にフォアハンド・
ストロークを数多く練習しているとこの症状が出ます。
3番目はサーブ練習のし過ぎで起る症状で、フォアハンド同様、小指側あるいは肘の裏側に痛みがあります。
バックハンド・テニスエルボー
テニスのやり過ぎで肘の外側(親指側)前腕部の筋肉が疲労、更に悪化すると肘の筋肉の付け根(以後、腱と表記)も
痛めてしまうのが、バックハンド・テニスエルボーです。痛みがひどい場合は、腱が炎症、部分的に断裂している場合も
あります。腱は筋肉と違って丈夫な分、逆に傷めると修復に時間がかかります。テニスエルボーの治療は根気強く焦らずに
することが大切です。
症状の程度
STEP1
テニスエルボーになりかけの頃は、まだそれが筋肉痛やちょっと腱に疲れがたま� ��ているぐらいの認識しかなくて、
痛みも2,3日すれば回復します。これで痛みが取れている限りはあまり悩む必要はありません。ここで要注意なのは
週末しかテニスができない人です。2,3日、間隔をあけてテニスができる人は自然に回復する時間がありますが、
週末プレーヤーはどうしても2日連続、土曜日にやり過ぎて、痛みがまだ取れないうちに翌日もプレーしてしまいます。
これが続くと次第に痛みが取れなくなり、腱の疲労が蓄積してくるわけです。
STEP2
次のステップは、鈍痛が慢性的に肘に残り、ふだんの生活でも気になり始めます。この状態でテニスをすると、もう最初
から痛みがあるはずです。そうなると� ��ドクターエルボーやら、サロメチール(古いですね)の登場です。
ドクターエルボーは確かに肘にかかる衝撃を吸収する効果があります。しかし、それはテニスをやっている間、衝撃を
100から60ぐらいに和らげると言うことでしかなく、すでに傷んでいる肘には更にストレスがかかります。つまり
ドクターエルボーは無理してでもテニスをするための道具であって、治療にはまったく効果はありません。
(テニスエルボーでない人が予防で使用するのはOKです。)
STEP3
最終ステップは、ボールを打つことが痛くてできなくなり、仮に無理してやってもプレーを楽しめない状態になります。
そのまま続けていると肘は悪くなる、肘をかばってプレーす� �ので変なクセがついたり、他の箇所まで故障する、納得の
いくプレーができずテニスが楽しくなくなるの三重苦です。この段階では肘の腱は部分的に断裂している場合があります。
私の経験から言うとSTEP2の時点で何とかしておかないと面倒なことになります。コートで見かけるドクターエルボー
さんは間違いなくテニスエルボーの予備軍です。
"にきびB5"
まずテニスエルボーに限らず、怪我や痛みがある場合に知っておくべき対処法「RICE」をご紹介しておきます。
・Rest(休息) 直ちに運動を止めて休む
・Ice(冷却) アイシングする
・Compression(圧迫) テーピングやアイシングの氷嚢などで患部を圧迫する
・Elevation(挙上) 患部をできるだけ高い部分に上げる
怪我をした当日は風呂,飲酒は避け,患部を動かさないように気をつけます。(患部に近い場所はストレッチも禁止です。)
そして、できるだけ速やかに医者にかかるということが大切です.
これが忠実に守れればSTEP1〜2の初期程度のテニスエルボーはひどくなる前に治せると思います。
私が受けた治療法
私の場合、STEP2と3の間ぐらいで、ちょうど日本に帰る機会があり慈恵医大のスポーツ外科に行き、めでたくテニス
エルボーの宣告を受けました。
まず、強烈な痛み止めと筋肉弛緩効果があるコーチゾンという薬を直接腱の付け根に注射しました。
(肘の傷みは、極端に言うと注射をうったとたんになくなりました。それくらい 強烈です)
コーチゾンの注射は,痛みがひどくて日常生活にも差し支える、「とにかく痛みを取ってくれ!」というレベルでなければ、
筋肉や腱に与える影響が大きすぎるので避けた方がいいと思います。
その後、冷湿布を肘から前腕にかけて巻いて包帯をやや強めに巻いて肘を固定、腫れ止めの内服薬を処方されました。
医者からは冷湿布をして、包帯で肘を固定すること、テニスは論外、肘の負担がかかるようなことは極力避けるように
言われました。冷湿布は毎日2枚、約2週間続けました。この時期はとにかく傷んだ腱を休ませる事が最優先です。
腱は炎症をおこしているので、この時期はお風呂など温めない様にします。
言われ た通りにして、(包帯は大げさなので、きつめのサポーターにしましたが)バンクーバーに戻りました。
2〜3週間ほどしたら腱の損傷が回復してくるはずだから、そしたら始めなさいと言われたのがこのエクササイズです。
手のひらを下に向けた状態で腕を肩の高さまで上げて、手首から先だけを90度上に反らせて
前腕の筋肉を緊張させてゆっくり10数えます。終わったら筋肉を緩めて10数えます。
これを3−5セット、1日に3回ぐらい間隔をあけて行ないます。
これに限りませんが、テニスエルボーの治療を目的としたエクササイズでは、肘が痛くなるほど力を入れたり、
ストレスをかけてはいけません。腱は筋肉とは違い、いじめればその分強くなる� �言うものではありません。
腱の周囲の筋肉をつけて,腱への負担を軽くすることが目的です。
3週間後、バンクーバーでフィジオセラピーに通いました。治療は最初の2週間は週3回、その後の1ヶ月は週2回、
最後の1ヶ月は週1回でした。3ヶ月目あたりになって治療に行く回数が減っているのは、筋力トレーニングの方法の
要領がわかり、セラピストからも「自宅でやれるんなら、わざわざもう通う必要はないよ」と言われたからです。
トレーニングメニューを見ていただくとおわかりのようにゴムロープとダンベルさえあれば、自宅でできるものばかり
です。当時はほぼ毎日、今でも2日おきぐらいにやっています。
まず、個室でセラピストのマッサ� �ジが5分ほどあります。あまり強い力を入れないで人差し指と中指で円を描く様に
患部をマッサージするだけです。腱の付け根を中心に上下の筋肉もマッサージします。先生曰く、このマッサージは
痛みがある時はいつやってもいいそうで、私は今でもやっています。入浴中にやると痛みが和らぎます。
次に低周波マッサージを10〜15分です。これはオムロンの低周波マッサージとほとんど
同じなので代用できます。ここまでが治療兼リハビリの準備です。
パラノイアPPD
次はトレーニングルームでのリハビリです。
エクササイズにはゴムロープと500グラムの軽いダンベルを使います。
回数とゴムロープにかける負荷は肘の状態や回復の時期にもよります。このページでは初期の段階を想定しています。
1 ますは肘のストレッチです。各ストレッチをゆっくり15数えながら肘を伸ばします。
2 背筋を伸ばして椅子に座り、両肘を肩の高さまで上げ、次に片腕づつ交互にゆっくり背伸びする要領で上に
伸ばします。これを5分。これは単調ですが、肩のストレッチだけでなく、筋力もつきます。
3 ゴムロープで肘、肩の筋力トレーニングをします。� �エクササイズを10回づつします。当面は1セット
で十分でしょう。ゆっくりとゴムロープを引っ張るようにして下さい。肘が痛かったらすぐ止めて下さい。
(背景とモデルがお見苦しい点、平にご容赦下さい。)
→ → →
手前に引く 前方に押し出す 腕を開く様に引く
→ → →
体の側に引く ゆっくり前方に引っ張る 肩の位置まで引き上げる
4 肩の筋力トレーニングです。各エクササイズ10回づつ、2〜3セットします。これもゆっくり行ないます。
→ →
体の横から上に上げる 親指を上に向けて肩の位置まで上げる
5 400グラムぐらいの軽いダンベルを使って手首、前腕、肩の筋力トレーニングです。
各エクササイズを10回づつ、それを3〜5セットほどします。
手の甲側への曲げ伸ばし 手のひら側への曲げ伸ばし 左右に回旋
6 最後ももう一度肘のストレッチです。エクササイズで肘に負担がかかっているので入念にして下さい。
要注意
くどいようですが、過度の負荷をかけたり、回数を早急に増やすなどの焦りは禁物です。テニスエルボーのリハビリは
腱に負担をかけない様にゆっくりと時間をかけて、周辺の筋肉をつけながら、腱の自然回復を待つことにあります。
筋� �トレーニングのために腱に負担がかかるのは、まさに本末転倒です。
1ヶ月目は本当にこんなに軽いリハビリで効いてるのかな?という感じでしたが、ここで焦ってはいけません。
この時期は、まだ腱が十分に回復していない段階でやっているわけですから、ちょっと無理するとまた腱を
傷めてしまいます。
2ヶ月目に入ると、ダンベルやゴムロープの回数や負荷を少しづつ上げていきます。大体2週間で10%ぐらいづつ
アップしていきます。私の見るところ、肘の回復を見ながら、この回数や負荷を増やすタイミングがセラピストの
腕の見せ所のようです。
3ヶ月が過ぎてセラピストから最終的に「もう来なくていい宣言」をもらいました。ただ、それ� ��完治したということ
ではなく、後は自宅でやって下さいという意味です。
何が異常なPap検査を引き起こす
要注意
3ヶ月目あたりにあると、痛みもなくなって来て、「もしかしたらテニスができるのでは?」と思い始めます。
正直な話、やってできないことはありません。しかし、肘はテニスエルボーになる前の状態にやっと戻ったか、
戻りかけている途中ですから、ふだんより少なめにやっても、ダメージは思っているよりはるかに強烈です。
せっかく直りかけたのに、今までの苦労が水の泡になります。
セラピストも言っていましたが,約1/3の人が、この時点で無理をし過ぎて、もう一度、一からやり直しだそうです。
そして、もう想像がつくと思いま すが、この場合、完治までにかかる期間は、始めての治療で完治する期間より、
はるかに長期にわたります。
テニスエルボー気味の方、テニスエルボーを治してテニスに復活した方へのアドバイスです。
用具編
1 重いラケット、トップヘビーのラケット、フレームの硬いラケットは避ける
2 ガットはとりあえず55ポンドかそれ以下で張る。完治すればもとに戻せますが、それでも硬すぎるのはNG!
3 衝撃吸収のダンパーは必ずつけましょう
4 グリップサイズは、太すぎても細すぎても無駄な力を使うので負担になります。手に合ったサイズをお薦めします。
5 � ��クターエルボーは、治ってから再発予防で使うのはOKですが、痛くてつけるのは、気休めにしかなりません。
6 ダンロップから肘に優しいボール「アブゾーバー」が発売されました。入手できるのなら試す価値はありそうです。
技術編
1 シングルハンドのバックボレーが一番肘に悪いので、完治するまでは両手ボレーにするか、ネットには出ない!
2 コンチネンタルグリップ(薄いグリップ)は肘にダメージがあるので、セミ・ウエスタンにしてみる。
3 フォア、バックに限らず、腕を伸ばした状態で打つと肘に来ます。常に肘は軽くまげて打つ。
4 打点が後だと肩、肘を無理に使うことになります。意識して打点を前にし て振り抜く。
5 サービス、スマッシュで内転を多用すると肘に負担がかかります。当分はスライス系の打ち方をお薦めします。
準備、その他編
1 打ち始める前のウォーミングアップと、ゲーム前と終わった後の肘のストレッチは絶対欠かせません。
2 テニスの後に、氷の入ったアイスバックを30分ほど肘にあてます。この効果は抜群です。
ただ、あてるだけでなく、右端の写真のようにサポーターなどで少し圧迫して固定するとさらに効果的です。
ストレッチの後ですぐアイシングできれば理想的ですが、無理なら帰宅後でも構いません。私はテニスの後、
ジャッグの氷をアイスバックに入れて、すぐアイシングするようにしています。
テニスエルボー気味の方、他の部位に関節痛などがある方はテニスバックに常備されておくといいでしょう。
3 予期せぬ動きやボレーが多いダブルスは復帰途中の人は避けて、ベースラインからのラリーが無難です。
4 寒い日のテニスでは、腕や肘の汗をまめに拭いて下さい。そのままにしておくと気化熱で冷えます。
5 肩や手首の故障も肘に影響します。テーピングなどで補強しておきましょう。
テニスへの復帰編
もうテニスができるまで十分完治したと判断したら、焦らず,慌てず、欲張らず、復帰しましょう。
1 暖かい日を選んで、十分にウォーミングアップと、肘の� ��トレッチをします。
2 当分は予防のためにドクター・エルボーをつけて打ちましょう。
3 壁打ちがあれば、まずここからスタート。サービスラインのやや後あたりからゆっくりフォアだけ打ちましょう。
4 痛みがないようだったらゆっくりバックも打ってみましょう。
この時点で肘に痛みを感じる時はすぐ止めて下さい。まだ,復帰できるところまで直っていない証拠です。
5 痛みもなく打てるようでも30分ぐらいでその日は止めて、十分なストレッチ、翌日の様子をみます。
6 翌日も痛みを感じない様だったら、2,3日間をおいて、少しづつ打つ時間を増やしてもいいでしょう。
7 ラリーをする時は、相手にもゆるいボールを打ってもらうようにします。ボレーはまだしない様に!
8 後は、ボレー、サービスができるか肘の様子を見ながらゆっくり焦らずもとのレベルまで戻していきます。
ここで、勘違いしてはいけないのは、テニスエルボーが治ったと言うこと=もうこれで大丈夫と思わないことです。
肘はやっと痛める前のレベルに戻っただけで すから、以前と同じラケット,同じ打ち方、同じペースでやれば、
まず間違いなく再発します。
1 治療中に続けてきたエクササイズは治ってからも続けて下さい。メニュー全部やる必要はありません。
TVを見ながらでもいいので15〜20分,続けることが大事です。
2 ラケット、打ち方などの再点検して、少しでも肘に悪い要素があれば直しましょう。
3 肘や腕に痛みを感じる時は、無理せずに肘を休ませましょう。
4 ウォーミングアップと、ゲーム前後の肘のストレッチは必ず、アイシングもできればメンテナンスは完璧です。
5 炎症を鎮める効果のある痛み止めの薬は、飲んでも構いませ� ��が、これを飲んでテニスをするというのは駄目です。
再発を防ぐために
テニスエルボーになったと言うことは、何か原因があるはずです。
1筋力不足
2打ち方に問題がある
3ラケットに問題がある
4回数が多すぎる
5ウォーミングアップとやストレッチなどをしないことによる、体の手入れ不足
6テニス以外にも肘を酷使することをしている
などなど、もう一度よく検証してみて、改善しないと同じことの繰り返しになります。
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